おせち料理の意味とは?食材に込められた意味や各お重について解説
2024年12月23日更新お正月の定番料理として広く親しまれている「おせち料理」。
彩り豊かで品数も多く、高級食材が詰め込まれたおせちは、新年の食卓を華やかに彩るだけでなく、日本の伝統文化を象徴する特別な料理のひとつです。
ところで、この「おせち」には、どのような意味や歴史が込められているかご存知でしょうか?
豪華な見た目や縁起の良さを感じさせる食材選びから、なんとなく「お祝いの料理」という印象を持つ方が多いかもしれません。
本記事では、「おせち料理」に秘められた意味やその歴史的背景をはじめ、一品一品に込められた願いや重箱に詰められている理由など詳しく解説します。
おせちの魅力を改めて知ることで、日本のお正月が持つ特別な雰囲気をより深く味わい、新年を迎える喜びが一層増すことでしょう。
「おせち」とは?
「おせち」とは、元日をはじめとするお正月のお祝いの席で食べる特別な料理のことを指します。
縁起の良い食材が用いられ、それぞれに意味を込めた料理を美しく重箱に詰めるのが特徴です。
お正月を彩る華やかな料理として広く親しまれていますが、見た目の豪華さだけでなく、深い歴史と日本独自の伝統が根付いています。
それでは、この「おせち」に込められた意味や歴史について詳しくみていきましょう。
「おせち」の意味・由来
「おせち(御節)」とは、季節の節目を祝い、その時期ならではの特別な料理を楽しむ、日本の伝統的な文化を象徴する存在です。
もともとは、季節の変わり目である「節(せち)」を祝うための料理を指していましたが、特に正月に食べられる料理として定着しました。
おせち料理を詰める重箱には、「幸福を重ねる」という願いが込められていて、新年の特別な時間を過ごす席にふさわしい縁起物とされています。
おせち料理が誕生した背景には、正月の期間中は神様をお迎えすることを最優先とし、炊事や掃除といった日常的な労働を避けるという習慣がありました。
そのため、あらかじめ作り置きでき、保存性の高い料理が中心となったのです。
煮物や酢の物などの保存性に優れた料理が多いのはこのためであり、現代は冷蔵技術の進化したことで、さらに多彩な料理を楽しむことが可能になっています。
こうした歴史を知ると、おせちがいかに伝統と工夫の結晶であるかがよく分かりますね。
おせちを食べる意味
おせちの起源をたどると、平安時代の宮中行事である「お節会(おせちえ)」に行き着きます。
この「お節会」は、季節の節目ごとに神様に供物を捧げ、無病息災や五穀豊穣を祈るために行われる重要な行事でした。
この行事で神様に供えられた料理は「お節供(おせちく)」と呼ばれ、神様への感謝と祈りを象徴するものでした。
その後、この「お節供」が時を経て発展し、現代の「おせち」へと形を変えていきました。
江戸時代に入ると、節供の中でも新年を祝う正月の料理が庶民にも広まり、現在のようなおせちの形式が生まれました。
年始に神棚に供えた料理を家族で分け合うことで、新しい年の幸せや健康を願う風習が定着したのです。
おせちは宮中の伝統と庶民の生活文化が融合して生まれたもので、日本の正月行事を象徴する特別な料理として受け継がれています。
おせち料理を祝い箸で食べる意味
おせち料理を食べる際に使用される「祝い箸」は、両端が細くなった独特の形状をした箸です。
この「祝い箸」は、新年のお祝いの席にふさわしい道具として古くから用いられてきました。
祝い箸の特徴的な形状には、「神人共食(しんじんきょうしょく)」という重要な意味が込められています。
これは、新年に神様と共に食事をすることで、その年の幸福や健康を願うという日本独自の考え方です。
片方を神様が、もう片方を人が使って食事をすることを象徴していて、神様への敬意と感謝を表す大切なアイテムとされています。
このように神聖な意味を持つ祝い箸ですが、使用する際には注意が必要です。
特に、祝い箸を逆さにして取り箸として使用する行為は避けるべきとされています。
祝い箸は神様との絆を象徴するものであるため、その役割を尊重して正しく使うことが求められます。
おせち料理に込められた意味
おせち料理は、単なる正月のごちそうではありません。
その一品一品には深い願いと意味が込められていて、新年を迎えるにあたっての縁起を担ぐ重要な役割を果たしています。
その起源は、神様へのお供え物として始まったことから、食材の選び方や調理法にも日本の伝統的な美学と祈りの心が反映されています。
美しい盛り付けや鮮やかな彩りはもちろん、それぞれの料理に宿る願いが、おせちを特別な料理として際立たせています。
一品一品に込められた意味
おせち料理は見た目の華やかさだけではなく、その構成や品数にも意味が込められています。
一般的に、おせち料理の品数は奇数にする習慣があります。
これは、奇数が「吉数」として縁起の良い数字と考えられているためです。
一方、偶数は「割れる」を連想させ、縁起が悪いとされることから避けられています。
そのため、縁起を重んじる正月料理として、奇数の品数が基本とされています。
地域や家庭によって異なるものの、おせちは20〜30種類の料理が用意されるのが一般的です。
特に、定番とされる品数は21種類で、これらの料理にはそれぞれに新年への祈りや感謝、家族の健康や幸福への願いが込められています。
おせち料理は、主に「祝い肴」「口取り」「焼き物」「酢の物」「煮しめ(煮物)」の5つのカテゴリーに分けられます。
それぞれのカテゴリーには異なる意味や背景があり、その一つひとつが新年を迎える特別な食卓にふさわしいものとなっています。
「祝い肴(いわいざかな)」の意味
祝い肴(いわいざかな)とは、お祝いの席で酒の肴として用意される料理のことです。
特に「祝い肴三種」と呼ばれる料理は、おせち料理の中でも重要な役割を担っています。
関東地方では「数の子」「黒豆」「田作り」、関西地方では「数の子」「黒豆」「たたきごぼう」の三品が一般的です。
食材・料理 | 意味 | |
黒豆 | 勤勉・健康 | 「まめに働く」「健康で勤勉に過ごす」という願いが込められています。黒豆を食べることで、たらしい一年を健康に過ごし、仕事や日常に真面目に取り組むことを祈願します。 |
数の子 | 子孫繁栄・両親の不老長寿 | 卵がたくさん詰まっていることから「子孫繁栄」を象徴しています。また「ニシン=二親」という語呂合わせから、両親の健康や長寿を願う意味も込められています。 |
田作り(ごまめ) | 五穀豊穣 | 昔、田畑の肥料として魚が使われたことに由来します。これにより「豊作」や「商売繁盛」を願う意味が込められています。小魚を甘く煮た田作りは、豊かな実りを象徴する縁起物です。 |
たたきごぼう | 他族や家業が土地に根付く・幸せが細く長く続く | 根が地中深く伸びるごぼうは、「家族や家業が地に根付いて繁栄する」という意味を保ちます。また、形状が細長いことから「幸せが細く長く続く」ことも願われています。 |
「口取り」の意味
「口取り」とは、「口取り肴」の略で、「酒の肴」を指します。
華やかな見た目や彩りが特徴で、甘みのある料理が多く揃えられています。
お祝いの席では、最初に振る舞われることが一般的です。
食材・料理 | 意味 | |
昆布巻き | 幸福 | 「喜ぶ」という言葉に通じる語呂合わせから、喜びや幸福を象徴する縁起物とされています。 |
伊達巻 | 学問成熟 | 巻物の形状が書物を連想させることから、「学問の成就」や「文化的な繁栄」を願う意味が込められています。 |
栗きんとん | 豊かさ・勝利 | 黄金色の見た目から「財運」や「繁栄」、さらには「勝負運」を象徴する料理です。 |
紅白かまぼこ | 魔除け・神聖清浄 | 半月状の形が元旦の「初日の出」を連想させることから、新年のお祝いにぴったりの一品です。紅は「喜び」や「魔除け」、白は「神聖さ」や「清らかさ」を表しています。 |
絹たまご | 財宝 | 黄身は「金」、白身は「銀」を象徴し、この2色が鮮やかな模様を描く「錦」を表現しています。「金運上昇」を願う縁起の良い料理です。 |
「焼き物」の意味
「焼き物」は、その豪華さや味の美味しさだけでなく、食材一つひとつに込められた願いや象徴が、お正月の特別感を引き立てます。
お重の中でも「焼き物」は彩りを添える重要な役割を果たしています。
食材・料理 | 意味 | |
海老(エビ) | 長寿 | 長いひげと曲がった体が「長寿」を象徴し、「腰が曲がるまで長生きする」ことを願う縁起の良い食材です。 |
鯛(タイ) | めでたい・慶び | 四季を通じて味が落ちず、形も美しいことから縁起の良い魚とされています。また、恵比寿様が持つ魚であることから七福神信仰とも結びつき、「めでたい」を象徴する食材です。 |
棒鱈(ボウダラ) | 食に困らない | 保存性が高く、長期間食べられるため、「食に困らない」暮らしを願う縁起物として親しまれています。 |
タコ | 多幸・困難や苦難を煙に巻く | 「多幸」や「タコ」の語呂合わせや、柔らかい体で難局を甘く乗り越えることを象徴しています。また、吸盤が多いことから幸福を引き寄せるとも言われます。 |
鰤(ブリ) | 立身出世 | 「出世魚」として知られ、成長とともに名前が変化する特性から、立身出世や社会的成功を願う食材です。 |
鮑(アワビ) | 不老長寿 | 弾力のある食感が生命力を象徴し、不老長寿を願う意味があります。また、古くから高級食材として珍重されてきました。 |
蛤(ハマグリ) | 夫婦円満・良縁 | 貝同士がぴったりと合うものが一組だけであることから、夫婦や縁起の象徴とされています。 |
トコブシ | 福溜め・長寿 | 貝殻の中に幅をため込む縁起物とされ、「長寿」や「家運降盛」を願う食材です。また、小さくても存在感のある味わいから、謙虚ながら確かな幸せを表現します。 |
「酢の物」の意味
おせち料理における「酢の物」は、主に酢を使って味付けした料理の総称で、さっぱりとした風味で他の料理の味を引き立てる役割があります。
また、酢には保存性を高める効果があるため、おせち料理の中でも日持ちする品として重宝されてきました。
食材・料理 | 意味 | |
紅白なます | 平和・平安 | 大根と人参を細く切り、紅白の彩りで「平和」や「平安」を象徴します。また、繊維が細く長いことから「長寿」を願う意味も込められています。 |
菊花かぶ | 邪気を払う・長寿 | 紅く染めて紅白を表すこともあり、祝い事に使われる菊の花から、めでたさや繁栄、健康を表しています。 |
酢れんこん(酢蓮) | 見通しの良さ | れんこんの穴は「先を見通す」という意味を持ち、将来の見通しが明るいことを願う縁起物とされています。 |
酢だこ | 多幸 | 「多幸」と「タコ」の語呂合わせから、新年の幸福を祈願する料理です。赤酢で染まった鮮やかな赤色が、魔除けやお祝いの象徴とされています。 |
「煮しめ(煮物)」の意味
おせち料理における「煮しめ(煮物)」とは、さまざまな食材を一緒に煮込んで味を染み込ませた料理で、素材ごとに象徴的な意味が込められています。
「煮しめ」という名称には、「家族や縁をしっかり引き締めて結ぶ」という願いが込められていて、おせち料理の中でも特に家庭円満や人との結びつきを象徴する重要な一品です。
食材・料理 | 意味 | |
ごぼう | 家族の安定・地に足をつけた繁栄 | 根が深く地中に伸びることから、「家業や家族が根付くように」との願いが込められています。 |
里芋 | 子孫繁栄 | たくさんの小芋が新芋の周りに付くことから、「子だくさん」や「家族繁栄」を象徴します。 |
人参 | 平和・平安 | 鮮やかな赤色が魔除けや祝いの象徴とされています。 |
たけのこ | 成長・出世 | 竹のように真っ直ぐ伸びることから、「子供の健やかな成長」や「出世」を願う縁起物です。 |
椎茸 | 延命長寿 | 傘を広げた形が、末広がりの繁栄を意味します。 |
昆布 | 喜び | 「よろこぶ」の語呂合わせから、縁起が良い食材とされています。 |
手綱(たづな)こんにゃく | 縁を引き締める | こんにゃくを結んで調理することから、「結びつきを強める」ことを象徴しています。 |
おせちの甘い味付けの意味
おせち料理が甘めの味付けになっているのには、深い意味があります。
それは、まず保存性を高めるためです。
砂糖を多めに使用することで、料理の日持ちを良くし、正月の三が日に炊事をせずに済むよう工夫されています。
昔は冷蔵技術が発達していなかったため、甘い味付けや酢を使った料理は、貴重な保存方法の一つとされていました。
この工夫が、正月の伝統料理として現代まで受け継がれています。
また甘い味付けには文化的背景もあります。
かつては砂糖が非常に貴重な食材であり、贅沢の象徴とされていました。
そのため、新年を祝う特別な時期には、ふんだんに砂糖を使った料理が振る舞われるようになりました。
こうした贅沢な味わいは、家族で新しい年を迎える喜びを一層引き立てるものとなりました。
代表的な甘めのおせち料理として、「栗きんとん」や「黒豆」、「伊達巻」などが挙げられます。
これらの料理は、味わいだけでなく保存性の高さからも重宝され、お正月を彩る欠かせない存在となっています。
おせちの具材に込められた日本独自の美学
おせち料理は、単なる祝いの料理ではなく、日本の伝統文化を象徴するアートとも言える存在です。
その美しさは、味わいだけではなく、視覚的なデザインや調和にまで及んでいます。
重箱を開けた瞬間に広がる色彩や配置には、日本独特の美意識が現れています。
重箱の中では、特に「赤」と「白」のコントラストが目を引きます。
例えば、「紅白なます」や「紅白かまぼこ」がその代表的な例です。
赤は魔除けの意味を保ち、白は純粋さや清浄を象徴しています。
この色合いの組み合わせは、新しい年を清らかに迎えるという願いが込められていて、見た目にも縁起の良さが伝わってきます。
さらに、食材の形や切り方にも日本独自の工夫が施されています。
例えば、「れんこん」は輪切りにすることで「将来の見通しが良い」という願いを形で表しています。
また、伊達巻の渦巻きには「知恵や学問を身につける」という意味が込められていて、「昆布巻き」の結び目は「喜ぶ」という語呂合わせから来ています。
これらの要素が組み合わさることで、おせち料理は見た目の美しさと縁起の良さを兼ね備えた料理となっているのです。
重箱全体の詰め方にも細やかな気配りがなされています。
料理一つひとつの配置や高さのバランスを考えながら詰めることで、蓋を開けた瞬間に「おめでたさ」や「豪華さ」を視覚的に楽しむことができます。
おせち料理は、こうした細部にまで込められた工夫と美学によって、日本の正月を象徴する特別な料理として、今なお多くの人々に親しまれています。
重箱の段ごとの役割と配置の意味
重箱に詰められたおせちは、食材そのものの意味だけでなく、段ごとの役割や配置にも日本独自の精神が表現されています。
おせち料理が詰められる重箱は、単なる収納容器ではなく、新年を祝う象徴的な存在です。
「幸福を重ねる」という意味が込められた重箱は、段ごとに異なる役割を持ち、食材や料理の配置も計算されています。
おせちの重箱の数は、縁起が良い5段が一般的です。
3段でも問題はありませんが、幸福をさらに重ねる意味を込めて、5段にする家庭が多いです。
一般的には以下のように段ごとに役割が分けられます。
おせちの重 | 意味 |
一の重(祝い肴) | 不老長寿・子孫繫栄・家内安全 |
二の重(口取り・酢の物) | 学業成就・喜び・財産など |
三の重(焼き物) | 出世・不老長寿・夫婦円満など |
与の重(煮しめ) | 無病息災・末広がり・家運向上など |
五の重(空箱) | 神様からの福を授かる |
このように段ごとの構成には、家族の健康や繁栄への願いが込められていて、料理が重なるごとに喜びや縁起が増していくという考え方が反映されています。
それでは各重段について詳しくみていきましょう。
「一の重」の意味
おせちの一番上に位置する「一の重」は、新年の願いを込めた「祝い肴」で構成され、不老長寿や子孫繁栄、家内安全の意味があります。
新年最初に開ける重箱として、祝いの席にふさわしいお酒の肴が入ります。
「二の重」の意味
「二の重」は、おせちの二番目の段で、「口取り」や「酢の物」が詰められています。
「口取り」は、見た目が華やかなものが多く、代表的なものには「紅白かまぼこ」「栗きんとん」「昆布巻き」「伊達巻き」などがあります。
甘く味付けすることで日持ちが良くなるため、保存性が高く、おせちの具として重宝されています。
「酢の物」は、「口取り」同様に日持ちしやすく、代表的なものには「紅白なます」や「酢れんこん」などがあります。
「三の重」の意味
「三の重」は、縁起の良い食材や、お祝いにふさわしい高級食材を詰める段になっています。
海の幸の「焼き物」を中心に入れていきます。
出世祈願の意味を込めて「鰤(ブリ)」や「海老(エビ)」、そしてめでたいと言われる「鯛(タイ)」などが代表的です。
重箱に隙間がないように詰めて、見た目を華やかに仕上げるのが特徴です。
「与の重」の意味
四段目は、四が「死」を連想させることから、「四の重」ではなく、「与の重」と表記します。
山の幸を使った「煮物」を詰めるのが一般的で、たくさんの具材を一つの鍋で煮ることから「家族が一つに結ばれますように」という願いが込められています。
「煮しめ」や「筑前煮」などが代表的な料理で、具材は炒めず、煮汁を残さないように仕上げるのが特徴です。
「五の重」の意味
五の重には「神様からの福をいただく」という意味があり、通常は空箱を用意します。
この空の重箱は「控えの重」とも呼ばれます。
五の重は将来の繁栄や発展の余地を意味しているため、食べ物は詰めずに空にしておくのが一般的です。
ただし、地域によっては、入りきらなかった料理や好きな料理を五の重に入れることもあります。
おせちが高級品と言われている意味は
おせちが「高級品」と言われる背景には、その歴史的、文化的、そして実際の食材や手間の面での特徴が関係しています。
以下にその意味を詳しく説明します。
使用される食材の豪華さ
おせち料理には、高級食材がふんだんに使用されています。
例えば:
- 伊勢海老や鮑、数の子、黒豆、鯛などの縁起物の食材は、特に高価で希少性が高いものが多い
- 保存性を高めるための加工が必要な食材や、伝統的な製法を用いたもの(昆布巻きや田作りなど)もコストがかかる
これらの素材自体が高価であるため、完成したおせちは必然的に「高級品」と見なされます。
調理にかかる手間と技術
おせち料理は、一つひとつの品目に意味が込められ、見た目の美しさや味のバランスが求められます。
そのため、作る際には以下の点が挙げられます:
- 品数の多さ:通常20~30品目以上が必要とされ、それぞれに異なる調理法や味付けが施される
- 保存性への配慮:昔から保存食としての役割があるため、塩漬けや酢漬け、煮物など保存が利く調理法が用いられる
- 美しい盛り付け:重箱に詰める際の彩りや配置も重要で、職人技が必要とされる
これだけの手間がかかるため、自家製で作るのも大変であり、購入する場合は専門店や職人が手がけるものが高額になる傾向があります。
文化的・象徴的価値
おせちは、ただの料理ではなく、正月の特別な行事を彩る縁起物としての意味を持っています。
特に以下のような点が「高級品」としての価値を高めています:
- 祝い事の象徴:一品ごとに縁起の良い意味が込められ、家族や一年の幸福を願う料理
- 日本の伝統文化:何世代にもわたって受け継がれてきた食文化の集大成であり、その背景が重みを与えている
このように、文化的な価値や特別な意味を持つことから、高級品と捉えられます。
家族の団らんを演出する特別な料理
おせちは「正月三が日は炊事をしない」という昔の習慣を受け継ぎ、家族でゆっくりと新年を迎えるための料理として提供されます。
その特別感や手間を省ける利便性も現代では付加価値として評価され、高級品とされる理由の一つです。
現代のおせち事情
最後に、現代におけるおせち事情についてみていきましょう。
現代における「おせち」の意味
現代でもおせち料理は日本人にとって特別な行事食の一つで、新年を迎える際の大切な文化的イベントの一部として位置付けられています。
しかし、時代の流れとともに、その役割や位置付けには変化がみられるようになりました。
かつては各家庭で手作りするのが一般的で、家族総出で準備するのが年末の風物詩でしたが、現在では市販のおせち料理を購入する家庭が増えています。
デパートや高級料亭、さらにはコンビニエンスストアに至るまで、様々な業態が多種多様なおせち料理を販売しており、そのバリエーションは驚くほど豊富です。
伝統的な和風おせちはもちろん、洋風や中華風、さらにはヴィーガン対応のものまで登場し、時代やライフスタイルに合わせた選択肢が広がっています。
また、家庭でのおせち作りについても変化が見られます。
「すべてを手作りする」という家庭は少なくなりつつありますが、その代わりに、一部の料理だけを手作りし、残りは市販品を取り入れる「ハイブリッド型おせち」を楽しむ家庭が増えています。
このスタイルは、手作りの温かみと市販品の便利さを組み合わせることで、忙しい現代人のライフスタイルにマッチしており、新たな形のおせちの楽しみ方として注目されています。
伝統を重んじながらも現代的な感覚で楽しむことができるようになっているのは嬉しいポイントですね。
個食化とカスタマイズ可能なおせちの需要増
近年、個人のライフスタイルに合わせた「個食化」や「カスタマイズ可能なおせち」の需要が増加しています。
家庭の人数や食の好みに合わせて、少量ずつのセットや一人分のおせちが登場。
これにより、ひとり暮らしの人々や、家族ごとに異なる食のニーズに応じた選択肢が増えました。
また、具材を自分で選んでアレンジできるカスタマイズ可能なおせちも人気で、特に食材の好みによって自分だけのおせちを作りたいというニーズに応えています。
このような柔軟なアプローチは、現代のライフスタイルにぴったりです。
海外版「おせち」料理
海外でも新年を迎える際には、縁起を担ぐ食べ物を食べる文化がいくつかの国で見られます。
以下に、いくつかの例を挙げます。
国 | 食べ物 | 意味 |
アメリカ南部 | 黒目豆(ブラックアイドピーズ)・ケール(コラードグリーン) | 黒目豆は幸運を、ケールはお金や繁栄を象徴するとされています。これらを一緒に煮込んだ料理「ニューイヤーズスープ」が定番です。 |
ドイツ | 豚肉・ザワークラウト | 豚は前進する動物であることから、未来に向かって進むことを象徴し、幸運が訪れるとされています。また、ザワークラウトは繁栄を意味するとされ、豚肉と一緒に食べることでさらに縁起が良いとされています。 |
イタリア・アルゼンチン | レンズ豆 | レンズ豆の形が硬貨に似ていることから、金運や繁栄を象徴するとされています。通常はソーセージと一緒に煮込んだ料理として食べられます。 |
スペイン | ぶどう | 新年を迎える際に「12粒のぶどう」を食べる風習があります。これは時計の鐘が12回鳴るたびに1粒ずつ食べ、一年の12カ月それぞれに幸運を呼び込むという意味が込められています。うまくタイミングを合わせて食べることが幸運を招くと言われています。 |
中国 | 餃子・春巻き | 餃子はその形が古代の金塊に似ているため、富や繁栄を象徴します。また、春巻きは金の延べ棒に見立てられ、豊かさを願う食べ物とされています。 |
韓国 | トックク(餅のスープ) | 薄く切った餅はコインに似ており、繁栄や金運を象徴します。また、トッククを食べることで「一つ年をとる」と言われており、新しい年の始まりを祝う重要な料理です。家族や親戚が集まり、温かいスープを囲むことで絆を深める意味もあります。 |
ギリシャ | バシロピタ(ケーキ) | このケーキにはコインが隠されていて、コインが当たった人はその一年が幸運になるとされています。 |
どの国も新年に縁起の良い食べ物を食べることで、幸運や繁栄、健康を願う共通点が見られます。
それぞれの文化が持つ独特の食習慣を知ることで、国際的なお祝いの雰囲気を楽しめますね。
まとめ
おせち料理の由来は平安時代にまで遡り、新年のお祝いと縁起の良さを象徴する伝統的な文化です。
また、五段の重箱にはそれぞれ意味が込められ、使用する食材や味付けも深い伝統に基づいています。
毎年なんとなく食べているおせちも、その由来や意味を知ることで、より特別で大切なものに感じられるでしょう。
おせちは神様へのお供えとして用意される大切な食事です。
縁起の良い食材をそれぞれのお重に詰め、神様への敬意を込めて準備しましょう。
そして、新年の始まりに神様とともにいただくことで、特別な一年を迎えることができるはずです。